『ファウスト』ゲーテ

ファウスト〈第一部〉 (岩波文庫)

ファウスト〈第一部〉 (岩波文庫)


 言わずと知れた名作『ファウスト』。
 ドストエフスキー(と言わず多くの文豪)に影響を与えた本ということで、読んでみた。
 地上の学問全てを修めたものの何にも満足することができなかったファウストが、悪魔と契約を交わし地上での満足に至る過程を辿る本。最初は快楽を、次は美を、最後は創造的活動を追求していく。
 第一部は恋愛の話で、誰にでも読める平易なものだが、第二部は恐らくギリシャ神話などの知識がないと堪能はできないだろうと思われる。私もそういった知識は皆無であったため、WIKIPEDIA先生にご助力頂いた。(これによって、理解度が格段と深くなった。)確かに、詩や古文調の文章が難易度を高めているようにも思うけれど、これはそんな小難しい場所を飛ばし読みしてでも一読に値する。さすが、ゲーテが24歳から書き始め、82歳まで書き続けた本で、彼の人生が詰まっているのだろう。
 要は「仕事」というのは快楽や美といった一時的なものと違い、永遠に残るものであり、それを極めることこそが人生の幸せである、又、「自由も生活も日ごとにこれを闘いとってこそ、これを享受するに値する人間といえるのだ」と。
今の自分には本当に胸に刺さる。
最後は盲目となり、自分の墓を掘る音が、民衆の田畑を耕す音だと勘違いし、その状況が人生において何よりも「最高の瞬間」であると至上の幸福を感じながら死に至る。
なぜ、ゲーテが最後の瞬間をこんな風にしたのか未だに意図が掴めない。
自分の墓を掘る音が、民衆が一歩一歩田畑を耕す前向きな桑の音だとなぜ勘違いできるのか。
そして、勘違いして死ぬことができたファウストは幸せだが、なぜ読者にその舞台裏を明かしたのか。

私も80になったら理解できるようになっているのだろうか。
人生と共に読み進めたい1冊。