『自由の牢獄』ミヒャエル・エンデ

自由の牢獄 (岩波現代文庫)

自由の牢獄 (岩波現代文庫)


 8つの短編集。

「自由の牢獄」
 神の世界から離れ、自分の意志の世界へと帰依することを誓った男は、111個もの扉から自分の運命の選択を迫られる。
或る扉は、財宝を手にする扉かもしれないし、或る扉は、野獣に食べられる扉かもしれない。
ただし扉自体はどれも似ていて、選択の根拠になるようなものは何もない。
さてどうする??という話なのだが、私たちの人生は常にこの扉の連続である。開いたと思ったら、違う扉が目の前に現れ、また開いたと思ったら扉が現れる。
どうにかして正しい扉を開こうと、なんらかの「サイン」を見つけることにやっきにもなるが、実際のところ、そのサインとは自分の心落ち着ける気休めにしかならない。
結局開くまでどの扉が正しいかなど分からないのだ。
「完全な自由とは完全な不自由なのだ」と結ばれるこの本は、自由に伴う責任の大きさを感じさせる一方で、同じ結果になったとしても、その過程にいかなる思索があるかで不幸にも幸福にもなると示唆されている。
主人公は結局選ばないという選択をしたのだが、何を選ぶか人生を賭けて考え続けたからこそ、選ばないという選択が彼にとって幸福な選択となったのだろう。
自由を考える本を読むといつも、何が幸せなのかわかならくなるが、自由な人生を選択してしまった私は、人生を賭けてその責任を負い続けなければならないなと決意を新たにする。


その他、「遠い旅路の目的地」「道しるべの伝説」等、本当に自分が求めているものは人生という旅路をかけて見つけるべきだと言われているような短編が多い。
また、目的が見えてしまったら、旅せざるをえないとも。
ただ、その目的地を知っている人は幸せだ。
こちら、まだ見つける途上。